投稿者: hajime

  • 高配当株は今がチャンス?日産の1兆円資金調達報道から株式投資と配当利回りを考える

    日産1兆円資金調達へ——高配当株投資家に突きつけられた新たな選択肢

    2024年6月、日産自動車が「1兆円規模の資金調達を検討している」との報道が駆け巡った。なにせ1兆円である。一般市民からすればまるで宝くじが1等連発する規模だ。株式投資に興味がある読者であれば、このニュースが自分のポートフォリオや高配当株選びにどう影響するのか、気になるところだろう。

    自動車業界はEV(電気自動車)へのシフトやソフトウェア開発への巨額投資が必要な激動の時代を迎えている。日産がこのタイミングで大型の資金調達に動くのも自然な流れだ。その一方で、「資金調達=株式の希薄化」や「配当余力の減少」という不安がよぎる投資家も多いはず。

    特に高配当株を目当てに長期投資する層にとっては、配当がどうなるのかが最重要ポイントだ。さて、このニュース、投資家はどう読み解くべきか?

    「高配当株=安泰」ではないが、長期投資ならチャンスも

    高配当株と聞くと「放っておくだけで配当金が入るから安心」と感じる人も多いだろう。しかし、今回の日産のような巨額資金調達が発表される背景には、成長投資の必要性や経営環境の大きな変化が隠れている。その資金をどのように使うのか、そして株主還元や配当政策がどう変化するのか、要注視である。

    日産の場合、過去にもリーマンショック後やカルロス・ゴーン元会長の騒動で業績が悪化し、2019年には減配、その後一時無配になったことがある。その後2022年から復配しているが、高配当株=配当が維持されるとは誰も保証できないわけだ。

    一方、「増資や社債発行による資金調達=必ずしもネガティブ」というわけではない。会社が成長し利益を増やせば、いずれ配当が再び増えるケースも多い。例えばトヨタ自動車も、成長投資のための資金調達を積極的に行いながら安定した配当を続けてきた。

    よって「高配当株しか買わない」ではなく、「その資金使途や中長期の戦略、企業体質も見る」のが長期投資家として重要だと私は考える。「短期的にはドリンクの自販機に手持ちを全部突っ込んで当たりを狙う運ゲー」になりがちだが、長期では堅実に増やすゲームだ。

    類似事例とデータから見る高配当株のリスクとチャンス

    では、過去にこうした巨額資金調達を行った企業や関連する配当利回りのデータはどうだろうか。

    まず、ソフトバンクグループは2020年に約4兆円規模の資金調達を行ったが、株価や配当政策は波乱含みだった。その後キャッシュリッチ体質に舵を切り、増配も実施した。

    また、総務省「家計調査(2023)」をみると、日本人の金融資産のうち株式・投資信託の保有率は増加傾向だ。日銀統計では「高配当利回り株の配当率(TOPIX高配当指数)」は、2024年5月時点で平均3.5%前後。個別銘柄では4~5%超も散見される。

    ただし「高配当株は減配もある」ことが過去の事例から分かる。たとえばキヤノンや三菱UFJフィナンシャル・グループなども過去に減配したが、数年で復活した。リーマンショックやコロナショック時にも多くの企業が一時減配したが、その後の成長ストーリーで再び「高配当」化した例は多い。

    高配当株投資を目指す初心者に伝えたい3つのアドバイス

    「高配当株に投資すれば安泰」と考える初心者は多い。しかし、資金調達や増資が発表されたときに慌てて売り買いするのは早計。ここで3つのアドバイスを贈る。

    1. 配当利回りだけでなく財務体質や成長戦略にも注目せよ
      高配当も、元手が減れば一気にパー。配当が減らされないか、企業の資金繰りや経営計画もしっかり確認しよう。
    2. 長期投資の視点を持とう
      「今期の配当が減った!」と慌てて売るのではなく、将来の増配や株主還元に期待してホールドする“おおらかさ”も大事。投資はマラソンである。
    3. 過去の事例やデータも活用しよう
      「あの会社のあの時の増資のあとはどうだった?」と歴史を振り返ることで冷静な判断ができる。悪いときこそ冷静に、有望ならむしろ買い増しもアリだ。

    「株式投資=一夜で億万長者」というのは都市伝説。コツコツ配当をもらって将来笑う、そんな“配当ライフ”を目指したい。